健康で文化的な最低限度の生活を下回ることとなった ことを理由に削減・廃止が違法であると判断された場合には,各処分行政 庁は,取消判決の拘束力によって,当該取り消された処分に代わる保護決 定を新たにし直すのみならず,老齢加算の削減・廃止を前提とした全ての保護決定を変更することになると考えられるが,?削減・廃止の判断過程 や判断資料が不十分であり,削減・廃止に十分な根拠がないことが違法の 理由であるとされた場合には,拘束力はその範囲でしか生じないと解され るから,各処分行政庁及び厚生労働大臣は,再度の検討により別の判断根 拠,判断資料によって老齢加算の削減・廃止を再度決定し,当該取り消さ れた処分に関しても,老齢加算の削減・廃止を内容とする保護決定を再度 行うこともできると解される。
そうすると,本件において,原告らは,本件各取消請求の認容とその判 決の拘束力を前提としても,前記の重大な損害を必ずしも避けられるとは いえないことになる。
ウ被告京都市の主張について (ア) 被告京都市は,取消判決の拘束力を理由に,取消請求が損害を避け る他の方法になる旨を主張しているが,前記イに照らし,失当である。
(イ) また,被告京都市は,保護変更決定が取り消されれば,新たな処分 がされることなくそれ以前の処分が効力を有することになるから,取消 請求の認容により,義務付けの訴えの内容が実現される旨も主張してい る。
しかし,前記イのように,再度老齢加算の削減・廃止を内容とする処 分がされる可能性もあること,また,原告らについては,毎年4月1日 を実施年月日として,冬季加算の削除による保護変更決定が行われてい るから,本件各取消請求が認容された場合も,各処分行政庁は,少なく とも冬季加算の削除を内容とする,取り消された処分と同一の実施年月 日の新たな処分を行う可能性が極めて高いことなどに照らすと,被告京 都市の主張するように,以前の処分が効力を有する状況になるとは考え 難い。
よって,被告京都市の上記主張は採用できない。
エ以上によれば,原告らの本件各義務付けの訴えは,「損害を避けるため に他に適当な方法がないとき」に該当する。
(4) 被告城陽市の主張について 被告城陽市は,厚生労働大臣が既に基準の改定をしている以上,処分行政 庁は,法8条1項により,その改定後の基準に従うことになり,改定以前の 基準に基づいた処分をすべき権限はない旨主張している。
しかし,そもそも法8条1項の厚生労働大臣の定める基準は,最低限度の 生活の需要を満たすに十分かつこれを超えないものであることが求められて おり(法8条2項),上記の改定が違法なものであると判断された場合に, 処分行政庁が,その改定された基準をいわばなかったものとして,それには 従わずに,改定前の基準に従った処分を行うことは,むしろ生活保護法の基 本原理に合致し,法8条1項の解釈としても問題がないと解することができ る。
したがって,被告城陽市の上記主張には理由がない。
(5) まとめ 以上のとおり,本件各義務付けの訴えは,いずれも行政事件訴訟法37条 の2第1項の「重大な損害を生ずるおそれ」及び「損害を避けるために他に 適当な方法がないとき」の要件を満たし,適法である。
2 本案の争点に対する判断 (1) 老齢加算制度の創設から削減・廃止までの経緯 本案の争点の検討の前提として,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば, 標記の点に関し,以下の事実が認められる。
ア生活扶助基準算定方法の推移(乙7の資料26〜27頁,乙25) 生活保護制度創設の当初は,当時の経済安定本部が定めた世帯人員別の 標準生計費を基に算出する標準生計費方式が採用されていた。
昭和23年8月からは,最低生活を営むために必要な飲食物費や衣類,家具什器,入浴料といった個々の品目を一つ一つ積み上げて算出するマー ケットバスケット方式により算定されていた。
在任特例協議
告示が在任特例協議の効力発生要件ではないといっても,在任特例協議に関する手続であって,告示を欠くことはその手続上の瑕疵であることは明らかであるところ,手続上の瑕疵が重大かつ明白であって,在任特例協議自体を無効とせざるを得ない場合もあり得るから,この点について検討するに,在任特例協議は,新設合併においては市町村の合併後2年を超えない範囲内という期間に限り,既に合併関係市町村の議員として選挙において選出され民意の信託を受けた者で,かつ,合併市町村においても議会の議員となる資格を有する者について,引き続いて合併市町村の議会の議員の地位を付与するというものであって,合併がなければ議員の資格を有した者に対する一時的な例外措置であり,合併関係市町村の議会の議決を経て行われるものである。
そして,合併関係市町村の議会の議決を経た上で協議が整った以上,その時点で協議自体は有効に成立したものというべきであり,告示は,協議の内容を合併関係市町村の住民に広く周知させる事後的行為にすぎないものというべきである。
そうである以上,在任特例協議において告示を欠いたとしても,そのことは,遡って協議自体に無効を来すような重大な手続的瑕疵になるものとはいえない。
特に本件については,旧αにおいて,同町が定めていた形式による告示(役場掲示場への掲示)こそ行われなかったものの,実質的にはより周知の効果があるものと思われる,行政連絡員を通じての広報紙の全戸配布を行っており,本件在任特例協議の内容を住民に周知させたことは前記認定のとおりである。
したがって,旧αにおいて,本件在任特例協議の内容がα公告式条例に基づいて旧α役場の掲示場に掲示するという正規の方法に従って告示されていなかったとしても,その一事をもって本件在任特例協議に重大な手続的瑕疵があるとはいえないと解するのが相当である。
以上の次第であるから,本件在任特例協議は,旧αにおいて法定の告示を欠いているという瑕疵があるものの,なお有効であるものというべきである。
この方式では,一般国民の 消費構造の変化や,一般労働者の賃金の上昇に対応して保護基準を大幅に 引き上げることは容易ではなかった。
そこで,昭和36年度からは,マーケットバスケット方式に代わってエ ンゲル方式が採用された。
飲食物費のみをマーケットバスケット式に積み 上げによって求め,低所得世帯の実態調査から,この飲食物費と同額を支 出している世帯のエンゲル係数の理論値を求め,更にその飲食物費をエン ゲル係数で除して最低生活費とする方式である。
これによって,昭和36 年度において18%の高い改定率が実現された。
昭和37年8月には,社会保障制度審議会が,「社会保障制度の総合調 整に関する基本方策についての答申および社会保障制度の推進に関する勧 告」の中で,生活保護基準の改善については,「最低生活水準は一般国民 の生活の向上に比例して向上するようにしなければならない。
」とした上 で,「国民一般の生活水準が高くなった今日,従来の保護基準はそれにお くれている。
」,「生活保護水準の引き上げは,当面,昭和45年に少な くとも昭和36年度当初の水準の実質3倍になるように年次計画をたて る。
」と勧告した(乙27)。
その後,昭和39年12月に社会福祉審議 会生活保護専門分科会から提出された,生活保護水準の改善についての審 議内容の中間報告が,「第?・10分位階級における消費水準の最近の上 昇率に加えて,第?・10分位階級と生活保護階層との格差縮少を見込ん だ改善を行なうべきである。
」などとした(乙26)。
これらを受けて,格差縮小方式が昭和40年度から導入された。
格差縮 小方式とは,政府経済見通しにおける個人消費の対前年度伸び率に格差縮 小分をプラスアルファして翌年度の保護基準改定率を決定する方式である。
生活扶助基準の評価については,中央社会福祉審議会生活保護専門分科会の昭和55年12月付けの「生活保護専門分科会審議状況の中間的とり まとめ」(乙29。
以下「昭和55年中間的とりまとめ」という。
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